
私は現在俳優を目指して「東京ガラパゴス」という養成所に所属しながら活動をつづけています。
僕はもともと高卒で、通っていた高校が工業系の学校だったということもあって23歳まで普通に工場で働いていたんですよ。何年か働くと大卒の年上の社員の皆さんに仕事を教えるような立場でしたのでやりがいはそれなりに感じていましたが、ふと将来の自分はここで働き続けてどうなっているのだろうと考えたんですよね。
その時思ったのは、「今のままでは10年後の自分が見えない。」ということでした。せっかく世に生まれたのだから、自分の存在価値をどこかに残したいという気持ちも強くて。
そんな時に、インターネットで養成所のオーディションを見つけて応募してみたんです。今考えたら、誰でも合格できるようなものだったと思うのですが、養成所のオーディションに合格したのが嬉しくて嬉しくて。高額な月謝も頑張って捻出していました。
そんな時、事務所の経営者同士の折り合いが悪くなり、事務所が分裂することになったんです。僕は、信頼していた経営者についていって、新しい事務所に移りました。でも、その数年後にまた新しい事務所が分裂することになって・・・
そもそも事務所からあまり現場経験をつめるお仕事が紹介されていなかったということもあって。
このまま稽古ばかりしていても何も残せないのではないか。10回の稽古より、1回の現場の方が経験を積めるのではないか。そんな迷いが自分の中に発生した時期でもありました。
そして何よりも、今のように人について行っているだけでなく自分の判断で道を選んでいかないと行けないと決心し事務所を辞めてフリーで活動を始めました。
当時はどこへ行くにも自分のプロフィールやら実績がわかるようなものを全部詰め込んだ大きなバックを持ち運んでいましたね(笑)そこから色々なご縁があって知人の紹介で出会ったのが東京ガラパゴスです。
現在は依頼があればスポットでエキストラや再現VTRなどの俳優のお仕事をしています。東京ガラパゴスでの活動の中では映像作品をつくる際に撮影などの裏方の仕事を担当しています。
裏方を知っている役者の方が、現場に立ったときにどんな事が要求されているかがわかりますし、よい経験をさせてもらっていると感じます。
もともとこの役者の世界を目指したきっかけにもなっている考え方なんですが、やっぱり「何かを残したい」という気持ちが強いんです。
そういった意味では自分は舞台よりも映像作品に興味が強いかなと思います。よい作品って時代を超えて残り、愛されますよね。誤解をおそれずに言うと必ずしも自分が演じる側に出ていなくてもそういった作品に携わって形として残すということに以前よりも価値を感じるようになりました。
もちろん隙あらば役者としてのチャンスも虎視眈々と常に狙っていますよ(笑)
先日実はある映画祭で自分が助監督兼キャストとして参加をした作品がノミネートされたのですが、エンドロールで自分の名前が流れいてるところを見てなんだか感慨深かったのを覚えています。
今は設備系のアルバイトをしています。
職人の世界なので最初はとまどいましたし、おそらく誰でも出来るという仕事内容ではありませんが、僕の場合は役者を目指す前の職場の知識と工業高校時代の経験が活かせる仕事なので合っているかなと感じています。
何をするにしても、その場その場で真剣に努力をしていれば過去の経験は現在の自分を助けてくれるなと感じます。
今までかなり色々なことに挑戦してきた僕がいうのもなんだか矛盾して聞こえるかもしれませんが、僕からアドバイスが出来るとすれば「なんでもやりすぎるな」ということです。
もちろん、色々な経験は本当に自分を助けてくれますが、幅を広げすぎて、わけがわからなくなってしまったら意味がないです。
自分なりに大きな括りというか、境界線を設けて「こういうものは積極的にやろう。」「こういうものは、やらないようにしよう。」と決めた方が良いと思います。何となくやるのではなく、自分でしっかりと決断してやる。
そして、自分がやろうと決めたことは、何としてもやりとげるようにしてください。そこに「いい経験」というものが生まれるのだと思います。
物事をやり遂げようとすると、どうしても辛いことや厳しいことに直面することがあると思います。世の中うまくいくことばかりではありませんからね。そんな時はやはり「辛抱」することが大事です。
辛抱して頑張れば心に一本強い線が通って「心棒」が出来る。それが今後も自分の夢に向かって頑張っていく糧になるんだと思います。